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イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマ

■イノベーションのジレンマとは?
「イノベーションのジレンマ」とは、クレイトン・クリステンセン氏が著書の中で展開している主張で、優良な企業の合理的な判断が、その企業を滅ぼす原因となるという考え方に基づいています。言い方を変えると、既に成功している企業は顧客ニーズに対応するという「持続的イノベーション」を行うことを是としているため、既存の評価基準や顧客のニーズに適っていない「破壊的イノベーション」を受け入れることができません。そして、「破壊的イノベーション」を推し進めることができる(もしくは、それしか生きる道がない)新興の小さな企業が新しい市場を形成し、元々の優良企業を市場から退場させるという結果になります。
クリステンセン氏は「イノベーションのジレンマ」は以下の5つの原則に従っているとしています。

@企業は顧客と投資家に資源を依存している
多くの場合、企業はスポンサーである株主や顧客を無視することは難しく、逆に顕在化している顧客のニーズを満たすことに自社の資源の多くを投入する必要があります。そのため、破壊的なイノベーションに率先して取り組むことが難しくなります。
この原則から思い浮かぶのは、技術に目新しさはなかったと言われていますが、iPod、iPhoneといった全く新しい概念を世に生み出したスティーブ・ジョブス氏の言葉です。彼は、「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」と語っていたそうです。この発言が、破壊的イノベーションが、顧客のニーズからは生まれないということを意味していると思います。

A小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
破壊的イノベーションのような新しいイノベーションは、大企業が成長戦略の一環として本腰を入れて取り組むには市場規模が小さすぎます。そのため、成功している大きな企業にとって、破壊的イノベーションに取り組むことは難しいと言えます。

B存在しない市場は分析できない
企業は、株主をはじめとしたステークホルダーへの説明責任があるため、えてして過去データに基づいた市場分析から見込みがありそうな市場に資源を投資することを求められます。何の実績もない破壊的イノベーションには、そもそも市場自体が存在しないため、分析すること自体不可能です。結果として、企業の資源を破壊的イノベーションのために投下することが難しくなります。

C組織の能力は無能力の決定的要因になる
企業の価値基準や業務プロセスが既に成功している製品・サービスに特化するように最適化されています。そのため、破壊的イノベーションの芽が生まれたとしても価値基準に適合せずに摘まれてしまうことになりますし、業務プロセス自体も新しい技術やサービスを受け入れて、育てるには適していないという結果になります。

D技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
持続的イノベーションにより、技術・性能を高めても顧客はその技術・性能を求めているとは限りません。逆に、粗削りで性能は高くなくても全く新しい価値を提供している破壊的イノベーションが市場を形成してくという結果を招く可能性もあります。
例えば、スマートフォン等が登場する前の日本の携帯電話には沢山の機能が実装されておりました。多くのユーザーがそれらの機能を求めていたのか、また実際使われていたのかというと疑問が残るところで、日本独自の進化を遂げたガラパゴス携帯(ガラ携)と揶揄されました。ガラ携は「持続的イノベーション」により、オーバースペックとなってしまった技術の例と捉えることもできるのではないでしょうか。これに対して、iPhoneは技術的な改善の余地は多くあったのでしょうが、「破壊的イノベーション」として、携帯電話市場を破壊してスマートフォン市場を形成していきました。

■イノベーションのジレンマから何が読み取れるのか?
以上のように「イノベーションのジレンマ」から読み取れることは、特定の技術・サービス、そしてそれに依拠している企業には、必ず栄枯盛衰があるということです。なぜならば、企業を成功に導いた技術・サービスに適合した組織形態、そして収益を最大化しようというその合理的な判断が企業に破滅をもたらすというパラドクスを明らかにしているからです。
経営者として頭にとめておきたいことは、一つの技術・サービスで成功したとしても、その成功は永続しないということを認識しておくことが重要だと思います。そして、長く生き残るためには、優良企業であればあるほど、成功している余力がある間に破壊的イノベーションの種を仕込み、開花させることができる組織を作りあげていく必要があります。

[参考文献]
クレイトン・クリステンセン(著), 玉田俊平太(監修), 伊豆原弓(訳). (2001). イノベーションのジレンマ. 翔泳社.

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