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配置と異動(初任配属、人事異動、自己申告制度、社内人材公募制度)

■配置と異動
人材を採用した後には、職場や仕事に人材を配置します。そして、一つの職場や仕事の配属が一定期間に達すると、特に日本の企業では人材を異動させることが多いです。ここでは、配置と異動について、下記3つの観点で考えてみたいと思います。

・初任配属と異動
・自己申告制度
・社内人材公募制度

■初任配属と異動
即戦力として経験者を採用する場合には、配置について検討すべきことはあまりありません。他方、非即戦力である新卒採用の場合には、採用後に初任配属について検討することが必要です。

これは、新卒採用の場合は、研究職系、営業系、事務系等の大括りの分野ごとに人材を採用しており、特定の職場や仕事への配属がそもそも予定されていないためです。

新卒の初任配属には、大きく2つの考え方があります。一つは、1~2年といった一定期間の間、営業所や工場などに全員を配属し、企業にとって基本的な教育や経験を積んでから、具体的な職能部門へ配属する方法です。

もう一つは、入社後に具体的な職能部門を配属先として割り当て、個別に配属していく方法です。

更に、日本の企業では、一定期間一つの職場・仕事に携わると、別の職場・仕事へ配置換えをする人事異動が実施される場合が多いです。

人事異動には、同じ職能部門内で職場を異動するローテーションと呼ばれるものと、職能部門自体を変えてしまう異動があります。

■自己申告制度
人事異動は通常、人事部や職能部門の責任者が主導して実施することが多いです。これに対して、社員の希望を異動に反映することを促す制度が自己申告制度と社内人材公募制度です。

自己申告制度は、社員が今後経験したい、配属されたい職場や仕事の希望を会社に伝え、その希望を踏まえて人事異動を検討するというものです。

自己申告制度のメリットとデメリットは以下の通りです。

<メリット>
・社員が経験したい職場や働き方について申告することができるため、希望効果によりモチベーションの向上につながる可能性
・社員が自分のキャリアについて考える機会を与えることができ、社員が主体的にキャリア開発に取り組むことを促せる可能性
・上司が社員の希望を知ることができるため、社員の希望を踏まえた管理・配属ができる可能性

<デメリット>
・所属する職能部門の上司に対して自己申告をすることになる場合に、社員の希望を率直に伝えることができず、逆にフラストレーションになる懸念
・自己申告した希望通りの人事異動とならないことが繰り返されると、社員のモチベーションを毀損する懸念
・現在の職場や仕事の経験の範囲から希望を表明することになるので、新しい分野の仕事を希望する社員が出てきづらい懸念

■社内人材公募制度
自己申告制度のデメリットである新しい分野を希望する社員が出てきにくいという点を解決するための手段として、社内人材公募制度が作られました。

社内人材公募制度は、あらかじめ担当する仕事を明示して、社内からその仕事を担当したいという人材を募集することを意味します。

社内人材公募制度のメリットとデメリットは以下の通りです。

<メリット>
・社員自らが応募し、希望にかなった仕事に就くことができるため、希望効果によりモチベーションが高まる可能性
・人材が滞留しやすい部門に閉じた世界から外に人材が流出していくため企業内の人材交流が進む可能性
・社内の人材発掘につながる可能性

<デメリット>
・所属する部門の上司や同僚の目を気にして社内人材公募に応募できず、逆にフラストレーションとなる懸念
・応募をしたものの採用されないという事態が進むと人材のモチベーション低下につながる懸念
・人材が出ていってしまう職能部門の管理職からすると戦力低下につながるため、社内人材公募制度を快く思わない管理職が出てくる懸念

■まとめ
以上のように、配属は即戦力採用であれば、採用元の部門に配属することになりますが、新卒採用の場合には、初任配属がなされることになります。

また、通常の人事異動は人事部や職能部門の責任者が主導して異動を検討・実施します。しかし、自己申告制度のようになるべく社員の希望に沿った形で異動がなされるような制度も出てきています。また、新しい分野の仕事については、社内人材公募制度のような人材発掘の手法も取り入れられてきています。

企業が有能な人材を惹き付けようとする場合に、なるべく本人が希望する仕事につけるようにするということは、希望効果を高めることにつながり、望ましいことだと思います。

そのため、自己申告制度や社内人材公募制度のメリット・デメリットを考慮して上手に活用していくことは有用なことだと思います。

[参考文献]
佐藤博樹, 藤村博之, 八代充史(著). (2007). 新しい人事労務管理 第3版. 有斐閣アルマ.