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【M&A】 デューディリジェンス

ディーディリジェンス(Due Diligence)(以下DDといます)は、M&A投資において、思い描く「仮説」が正しいかを検証するために、投資対象の事業内容や経営実態を詳細に、調査・検討することを指します。

思い描く「仮説」を検証するに当たっては、仮説作成の元となる定量情報/定性情報、買収価格を決定するための情報、統合に当たっての課題について検討を進めます。

DDに関しては、限られた時間で効果的な調査をする必要があり、総花的に行うのではなく、濃淡をつけてポイントを絞り実施していきます。

例えば、買収価格を算出するために直接的に影響する項目(バリュードライバー)に対しては、入念な調査・検討を行いますが、買収価格に大きく影響をしないような事項に対しては、簡易的に調査手続きを行います。

M&Aプロセスにおいて、DDはいくつか種類があります。実施のタイミング、担当者、対象によって、種類の分け方がいくつかありますので、ここでは3つの分け方について見ていきたいと思います。

①M&Aプロセスごとの分類
M&Aプロセスごとの分類とは、ディーディリジェンスが行われるプロセスごとに分類しています。

初期DD
NDA締結前後に行われる。案件を進めるか否かの判断材料として、簡易的に行われるDD。

詳細DD
法的拘束力のないLOI(Letter of Intent: 基本合意)の締結後に行われる、詳細なDD。

クロージングDD
最終契約締結後に最終契約書に記載する価格調整など、最終局面で行われるDD。

②検証領域ごとの分類
DDを実施する調査領域ごとにも分類がなされています。通常のビジネス・法務・財務に加えて、必要に応じて、人事・IT・環境などがあります。

ビジネスDD
買い手における事業買収後の事業戦略の仮説が正しいかを検証するために実施されます。買い手の事業部門を中心に実施されますが、論拠を確認するために財務DDや法務DDなどの結果と照合します。

ビジネスDDの確認項目は、マクロ環境分析、競合構造分析、事業構造分析、スタンドアローン分析、事業計画分析、統合イシュー分析などがあります。

人事DD
M&Aの目的として、対象会社の人材を獲得するということも含まれているため、その価値を計るために人事DDを実施することが必要になります。

特に人事DDが必要になるケースは、対象会社の価格競争力が人件費に起因している場合や、企業のカルチャーの相違により、統合に時間がかかると想定されている場合などが考えられます。

人事DDは大きく、財務情報と非財務情報の調査に分けることができます。

IT-DD
IT-DDを実施する目的は大きく3つあります。一つ目は、対象会社が利用している情報システムを把握し、保守運用費用や将来の設備投資の必要性について確認し、P/Lやキャッシュフローに与える影響を確認することです。

二つ目は、対象会社が使用している情報システムの不法利用や解約により、追加コストが発生するかを確認するためです。

三つ目は、対象会社が利用している情報システムに起因するビジネスリスクを確認することです。例えば、顧客や取引先と共同で利用している受発注システムなどにおいてトラブルが発生した場合には、事業機会の損失に繋がる可能性もありますので、事前にリスクを把握しておくことが必要になります。

環境 DD
近年、土壌汚染や水質汚染が取りざたされるようになっており、環境リスクが存在する場合に、環境DDを実施するケースが増えてきています。

③売り手/買い手ごとの分類
DDは売り手と買い手の情報の非対称性を緩和するために、買い手が実施することが多いですが、売り手が実施する場合もあります。

買い手によるDDをバイサイド(バイヤー)DD、売り手によるDDをセルサイド(ベンダー)DDと呼ぶことがあります。

[参考文献]
北地 達明 (著), 北爪 雅彦 (著), 松下 欣親 (著). (2012). 最新 M&A実務のすべて. 日本実業出版社.